私の住まいは小高い丘というよりは、昔は山だったところを切り開いて建てられた住宅地の一角にある。
昔の住宅街なので、土地区画がそう決まっていて、商業は一切できない。
コンビニの一軒もないので、不便と言えばそうだけれど、そもそもコンビニは、あまり利用しない。
近頃では、水筒を忘れた時に飲み物を購入するくらいだ。
なので、不便にも感じていない。
ご近所にはお年寄りが多くて、私の両隣もご高齢のご夫婦と未亡人。
以前、津軽三味線を弾いていた時、練習で毎日のように音を立てていたのだけれど、両隣とも、耳が遠いとか、ジャンジャンおやりなさいと言って頂くので、全く問題がなかった。
そう言えばご夫婦は、毎朝6時20分にバケツに水を汲んで、6時30分にはお二人でラジオ体操をしておいでだ。
最初は戸惑ったけれど、何十年もこうして来られたのかと思うと、真似ができないので、賞賛しか出て来ない。
ご主人は以前はどこかにお勤めだったようだけれど、今はお二人で家庭菜園よりちょっと大きなレベルの畑を作っておられる。
先日は、大根をいただいた。
「ちょっと待ってて」と言って、畑から抜いて来てくださるのだ。
葉っぱがみずみずしくて、捨てるのはもったいないと思い、ネットでレシピを調べてみたけれど、結局、代り映えもしないと思いつつ厚揚げと煮ることにした。
あまりにもおいしかったので、私って天才かしら?と言いたいところだけれど、それほど材料が新鮮だとおいしいということだと思った。
今日も、帰宅したところ、ご主人が隠れるようにして
「ゴーヤー、食べる?」
と言って、ゴーヤーを二本もいただいた。
何から隠れておられるのかと角度を見たら、ご近所の特定のお家から見えない位置だったので、何か理由があるのだろうと思った。
なんだか事情は分からないけれど、気が付かないふりをする方が吉のように思ったので、何も言わなかった。
そういえば、昨日車を洗っている時に反対側のご婦人からも話しかけられた。
特に用事はなくて、四方山話という感じ。
聞くのは不得意ではないので、話を伺っていたけれど、とにかく長い。
私は自分のこと以外話さない。
それがご近所付き合いの鉄則だと思っている。
それを思い出すうちに、何となくゴーヤーをくださった人の隠れる事情が分かったような気がした。
少し前まで小鳥で騒がしかったはずの林は、すっかりセミの音に置き換わっている。
そう言えば、Youtubeで、虫の音が聞こえるのは日本人だけだという記事があった。
気になって視聴してみたところ、どうやら日本語と関係があるらしい。
欧州にいた頃のことを思い出すと、そもそも日本のように蝉がいないのだからとも思ったけれど、なんだか理由があるらしい。
日本人とポリネシア人だけが、虫の声を認識できて、しかも言語と同じ左脳で聞いているのだそうだ。
人にはいろいろあって面倒だと思う。
でも、小鳥たちは虫の声が聞こえるのだろうか?
逆に虫たちは、どうなのだろう?
もしかしたら両方聞こえるのは人間だけで、彼らには、自分たちの声しか聞こえないのかもしれないと思う。
その方が便利だから。
そこまで考えて、思わず笑った。