昔、家紋といえば、その家に代々継承された物という意識があった。
なので、父方の祖母から譲り受けた着物にある蝶の紋は、我が家の家紋だと思って来た。
母方の家紋は違鷹の羽で、一般的な紋だ。
この場合、祖母から紋のついた着物や鏡を譲り受けたということもあって、気持ちは祖母の家紋に移って行った。
格好いいと理由ではない。
けれど、ある時、女紋というものの存在を知った。
昔は、特に田舎だと、結婚といえば家同士のものだったので、色々と支度が大変だったと聞いている。
祖母の実家は高野真言系の寺なので、それなりに支度があったらしい。
家紋は、嫁ぐ相手方のお家にも合わせる必要があっただろうし、そういうことでおそらくは、女紋で祖母を出したのではないかと推察している。
もう、それを尋ねる相手さえ存在しないので、想像するしかないわけなのだけれど。
蝶といえばアゲハが有名で、その家紋は、有名な武将が使っていたと聞いている。
ちなみに私の祖母の紋は三つ蝶であって、それとは程遠い。
しかも、線が横につながっている図は、どう見ても蛾に似ていると思える。
あまり言うと亡き祖母に申し訳ないと思うけれど、お花の紋などで、もう少し可愛いのが良かった気がする。
けれど、女紋というものが存在していた以上、実は、自由に選べば良いのではないかと思うようになって来た。
そもそも、着物を着る機会も減っていて、家紋など現代まで継承できているお家が多いとも限らないし、女紋がありなら、自分で選択すればお気に入りの紋が使える。
それを大事に継承しておられるお家は、それとして、一般庶民の私などは、それよりも素敵な家紋が使いたい。
さすがにアゲハ蝶を使うのは憚られるけれど、お花のきれいな家紋を見つけることができたら、何度目かの嫁入りの時に使えるかもしれない(苦笑)