運命について

世界のこと
UnsplashのGabriel Krausが撮影した写真

先日、久しぶりに、友人から運命を信じるかと尋ねられた。

人には定めがあって、人生が決まっているのだから、それに抗おうとしても大きな力には勝てないと思う方がいいのか、人生とは、自分の努力次第で変えられるもの、と思う方がいいのか、迷うところだと思う。
悲しいことが続く場合、後悔を残さないためには、”努力をしても運命には逆らうことが出来ないので仕方がない”という、自分に言い訳ができるので、もしかすると人には優しいのかも知れない。
これが、運命を否定したら、あの時こうしていればxxを助けることができたかもしれないと考えるので、ずっとその思いに苦しめられることになる。
後悔というのは、自分の内から湧き出て来るものだから、なかなか打ち消すことができない上に、逃れることも難しいので厄介だ。
けれどもこれが、まぁまぁ順調な人生を歩んでいたとしたら、運命になど関わることなく、自分の努力で人生を積み上げて行けばいいわけで、そう考えると、運命というものは、なにかしら大きめの悲しいことの起こる人こそ、信じると良いのかもしれないと思う。

宗教を持っている人からよく聞く言葉だけれど、
「その人に背負えない悲しみや苦しみを天は与えない」
と言う人がいる。
悲しみを抱えている人に、そんな言葉をかける意味が私にはわからないので、親しい相手であっても、即座に否定することにしている。
もしもその通りなら、自ら命を絶つ人はいないはずだ。
神仏の考えを否定して申し訳ないかもしれないが、人を中心に考えるなら、もう少し優しい考え方の方が、人は生きやすいと思う。
ただ、どんなに学問が進化しようと、やはり宗教を持つ人はいるのだから、必要な人たちがあるということだし、否定しているわけではない。
宗教を信じる人は、どこか、やはり純粋なのかもしれないと思う。

本来、親族のお寺の保育園に通っていて、食事の前には祈り、お堂でお遊戯、仏教寓話で育ったので、血の中には仏教がしっかり入り込んでいるはずなのだけれど、どうも、そうはならない。
子供の頃に、仏教で教わることと大人の行動に矛盾を感じて、それを指摘できなかったことがあった。
大きくなってからその疑問について尋ねたところ、人というのは修行中なので、人を見てはいけないと言われた。
そうすると、自分が仏教徒になった場合に考えと行動について、整合性が取れないことになる。
その辺りから、心が離れて行った気がする。

ただ、純粋に人を救おうと考えている人は、素晴らしいと思う。
昔、ブラザージョージ・フォンタナという国際学校のイタリア人の校長があった。
彼が就任している間、子供たちは。とても良い子だった。
「そんな悪いことをする子は校長先生に叱っていただきます」
と担任が、校長室に連れて行った時に、担任の思惑に反して、ブラザージョージは叱ったりしない。
けれど、子供たちと一緒になって、困った顔をしてから、どうしてこんなことをしてしまったのかについて、じっと考えているのだそうだ。
そうすると、子供たちはこの人を困らせることをしたくないと考えて、自ら変わるという行動をとったそうだ。
私自身、その当時は、震災後のボランティア活動をしていたので、ほぼ毎日お話をする機会があったけれど、いつも穏やかで、宗教がそうさせているのか、そもそもなのかはわからないけれど、人としてとても尊敬していた。
ある時、ブラザージョージが両手にソフトクリームをもって校庭に立っていらしたので、どうしたのかと思っていると、教室に忘れ物をして取りに行った子供たちのものを預かっておられたらしい。
教室には、アイスクリームを持ち込んではいけないというルールがあった。
1年生の小さな女の子たちが、アイスクリームを受け取りに駆け出して来たのを見ると、なんと私の娘とその友人だった。
そういう時にも私に何もおっしゃらなかったので、申し訳ない気持ちはあったが、ブラザージョージの優しさに気持ちが温かくなった。

宗教を持っている人の中には、本当に優しい人たちがいる。
その一方で、宗教を使って利益を得ようとする人たちも後を絶たない。
同じように宗教を流布しようとする人たちも、人の幸せを心から願っての活動なのか、野心を持っての活動か、見分けにくいけれど、そこは感じたい。
正しいとか正しくないの判断は、私にはつかない。
だけど、宗教家でもそうでなくても、人を助けようという人があれば、その気持ちは大切にしたいと思っている。

宗教は、運命を説くところが多いと思うけれど、既に人間として生まれてきたということでの宿命というものは存在すると思う。
人は、常に他を傷つけなければ生きては行けないようにできている。
それを考えないで生きれば楽かもしれないけれど、そういうことを自覚しながら生きて行く方が私には好もしい。

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