なくて七癖、と昔から言われている。
そうなのだろうな、と納得が行く。
ただ、癖とは呼ぶけれど、よく聞いてみると個性だったりする場合もあるわけで、そこをどのように区別するのかは、曖昧なのかもしれない。
癖は?と問われて思い浮かぶのは、私の場合は、運転の癖だ。
もうかなり前のことだけれど、250〜400ccのオンロード・バイクに乗っていた。
所有していたようなレーサー・レプリカタイプの車種だと、ハンドルの切れる角度が浅く、リーン・イン、或いはハング・オンというスタイルで、バイクを体ごと傾けるか、体を半分落とした(ぶら下がったという方がわかりやすいかも?)スタイルで重心を移して、コーナーの内側に倒さなければ曲がることができない。
連続カーブだと、当然ながら一旦体を起こしては、右に左に重心移動させなければならない。
どうして、鈴鹿の8耐(8時間耐久レース)がスポーツなのかと疑問に思う人がいるけれど、そういうわけだ。
私は、“ビビリ“なので、転ばないように操縦をすることにしていて、サーキットで周囲がどんどん転んでも、なんとか交わしてゆっくり走るタイプだから、競争にはならないけれど安全ではあった。
大きなバイクに乗らなくなってから久しいけれど、一時期は、バイクと車を併用して使っていた。
その頃乗っていた車の車高が高めで、当然重心も高めだったおかげで、車に乗ってカーブに差し掛かると、体が自然に傾いていた。
車の中で体を倒して曲がるなんて、とっても変な人である。
なので、いつも、よく知らない人を乗せて走る場合には、言い訳をしていた。
この癖は、長い間続いていたけれど、車高の低い車に乗ったせいか、時間の経過とともに忘れたものか、いつの間にか消えている。
但し、相変わらずバイクに乗る時のように、危険なことがないかと車道をしっかり見ながら走るので、視線は低めだと思う。
欧州に12年半ほど暮らしていた。
ハンドルは、左側に付いていたし、道路は右側通行だった。
これも、渡欧した当時は、毎日、運転する度に、右右右、と呪文のように唱えながら走っていた。
そういえば、ある朝、高速道路に入る手前の道路で、比較的簡単な(日本で左折する時の感覚と同じという意味で)右折をしようと考えていると、なんと真正面から車がやって来た。
(あ! やってしまった!)
そう思って、もう一度よく考えると、私は間違っていないと確信した。
そこで、やって来た対向車のナンバープレートを見ると、GB=グレート・ブリテン、イギリスナンバーだったのだ。
なるほど。
間違えたのは、あちらの方だった。
でも、私もまだ自信がなかった頃のことだったし、事故にならなくて、本当に幸いだと思った。
こういうことを経験すると、人は、もっと慎重になる。
ある意味、この経験は、ありがたかったかも?と思う。こうして一生懸命に自分に叩き込んだ右側通行だったけれど、日本へ帰国することになった。
そこで今度は、左左左、と呪文のように唱えながら運転をすることになった。
何度か、車のいない大きな交差点で、曲がって侵入する場所に悩んだこと、一度だけ往復2車線道路で反対を走りかけたことがあった以外、間違わなかった。
問題は、スピードだった。
欧州では、自動車専用道路ならば、120km/hとか130km/hだって普通だ。
ドイツにも速度制限のある道もあるけれど、今でもAutobahn(アウトバーン・自動車専用道路の意)の一部では、最高速度無制限の部分があると聞く。
空港へ行くのに、もう絶対間に合わないと思っても、魔法のように到着できる場合があると、友人から聞いた。
この場合の魔法は、勘弁していただきたいところだけれど(笑)。
考え方としては、商業などの経済活動の邪魔をしてはいけないということがベースになっているらしい。
さて、問題はスピード感覚の崩壊(?)が起こりかけることである。
バイクというのは、車よりもスピードを感じやすいので、例えばスキーなどを滑ると、ビギナーのくせに直滑降でも怖くないのだ。
でも、停止するのが上手じゃないし、これ以上、まっすぐ走ったら加速度がつくのは予測がつく。
そういう場合には、人のいない場所を見極めてから、座り込んで停止するしかなかった。
クラブメッドで、フランス人のコーチが、後ろから顔を真っ赤にして滑って来る。
「スピードをコントロールしてください!」
異論はなくごめんなさい、としか答えようがなかった。
当然、ビギナーコースのやり直し。
翌年出掛けて一つ昇級しても、またビギナーに落とされる。
なので、才能がないと諦めた。
車の話に戻ろう。
さて、スピード感覚というのは、感覚なので、一瞬にして何かに置き換えるということは、とても難しい。
怖くないスピードというものが、意外と速すぎたりもするわけなので、高速道路だと、つい速度が上がりそうになる時がある。
さらに、はっと気づくと欧州のように車間距離を詰めてしまいがちになるので、あおり運転と間違われては困ると気づき、距離を取るようにしている。
気付くと、まとまらないまま、長い文章になってしまった。
癖という話題になって、運転のことを中心に思い出したけれど、カテゴリーを変更しても、きっと色々出て来そうな気がする。
危険なことはともかく、癖があって個性的な方が、生きていて面白いかもしれないと思った。