ピアノラウンジ

仕事のこと
UnsplashGiancarlo Duarteが撮影した写真

ピアニストの若い友人がいる。
ピアノを弾く人は多いので、ピアノだけで生きていくことは難しい。
英語が上手でもそれだけで生きていくことが難しいのと同じことで、学んだ人はたくさんいるけれどプロとして生きていくのには、よほど秀でていなければ難しい。
競争力が必要だったり、他にも付加価値とか縁のようなものが必要だったりするのだろうと思う。
しかも、この先は、AIも便利なツールとしてある程度の割合を占めていくのは必至だ。
絵画も同じ。
アートはAIと違う部分を魅せて行かなければ、なかなか厳しい状況があると思う。

例えば、クラシックの分野で挫折を経験しても、ストリートピアニストとして大成功している人もあるし、学校の先生でなくても、ピアノを弾きたい子供たちに教える道もある。
友人は、ピアノのあるラウンジを経営している。
この彼女から、久し振りの連絡が来て、イベントを企画したのだけれど、会計をする人がいないから助けてほしいと言うのである。
え?
頭の中で、いろいろな場面が想像された。
「銀魂」というアニメの中で、一部分描かれている世界だし、あとは、利用した経験のあるホテルのバーのカウンターとかラウンジの光景から頭の中でミックスされた…もしかすると、かなりAI的な発想で作られた世界観だ。
しばらく考えたけれど、見てみたいという好奇心の方が勝っていた。
会計と言えば、経営では一番大切な部門なので、責任もある。
しかも、人がいなくて本当に困っているらしかった。
そこで、とりあえず見学がてら出掛けてみることになった。

カウンターの中というのが意外と狭いということを知った。
そして、バーテンダーという職種の人は、とても良く気が付くということにも驚いた。
しかも、なんでもできるのだ。
何でもとは、様々なリクエストが飛んでくるのを、ほとんど受け入れてこなすのだ。
タクシーの手配、お誕生日のケーキの準備、フルーツのカット、食事がしたい、牛乳が飲みたい等々。

ふと、自分の職業と照らし合わせて考えてみた。
この仕事と比べれば、リクエストは少ない。
顧客には平等に接しなければならないので、このような特別なリクエストは受けにくい。
けれど、線を引く位置は変えられる。
但し、経営者目線でいうと、いわれのない責任を問われるような結果になっては、働く人たちにとっても不幸だ。
そう考えると、ここのラインにまで緩めることは不可能だと思う。
但し、受け応えについては、とても勉強になった。

お酒というものを介することで、人の感覚は、少し自由になるのだと分かった。
料金の計算方法も独特で、とても興味深かった。
そのお店では、ピアノを聴き、たまにカラオケを歌い、他は若い女の子とおしゃべりをしながらお酒を飲むのである。
男性は、ここに価値を感じるからやって来るのだ。
バリューということを考えると、問題はない。
私にも、とってもおいしいフランスのシャトーレストランで頂く料理に価値を感じるのは理解ができる。
ん? と思うのは、価値観の相違であって、間違いではない。
ビジネスでの成功のステータスというか自己肯定感というか、そこで表現して納得できるのなら素晴らしいと思う。
それだけ整ったきめ細かなサービスはある。
至れりつくせりで、飲み物や食べ物、おしゃべりのサービスがあって、心地よく飲めるというのは理解ができた。
女性でもホストクラブに通う人はいる。
自分が利用しないからと言って、価値を疑う方がおかしいのだと気が付いた。
必要なものは残っていくし、要らないものは淘汰されていく。
これを逆に考えれば、しっかりとした必要な価値観を生み出さない限り、この先、私の職種は生き残っていけないというわけだ。
ビジネスは厳しい。
でも、挑戦していかなければならない。
今回のことは、とても良い社会見学になったと思う。

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