商いをするということ

仕事のこと
西野亮廣氏主宰Chimney town dao設置のAI”Midjorney"にて作画。

仕事=ライスワーク、お金を稼ぐもの、必要。
趣味=ライフワーク、お金は稼がないかも知れないもの、必ずしも必要ではない。

仕事仲間に誘われて、西野亮廣(キングコング)氏の本を読んでいる。
経済のことが分かりやすく書き記されているので、読みやすい。
でも、私たちは三人。
本を持っている二人がチャプターごとに交代で音読し、三人で聞いている。
仲間の一人のライスワークは、出勤がとても速かったのだけれど、職場に事情があって、最近は遅番ができたので、彼女の遅番に合わせて本を読む。
朝は6時過ぎには起きているので、他の話をしても、まだ全員、出勤時間には余裕がある。

この本の著者曰く、どんどん内容は露出させてかまいません、とのこと。
でも、彼の語り口調で読む方が面白いので、興味のある人は読んでもらえるとよいと思う。

内容をかいつまんで……というよりは、ここに流れているテーマの方が興味深い。
実は、人間らしい優しさだったりするのだ。
お金がなければだれかを助けることもできないし、夢も叶えられない。
そして、お行儀の悪い人たちが利益を得るために操作し、商品価格のバランスが悪くなって値上がりしそうになったら、わざと大量に販売品の数を増やして価格の高騰を防ぐというような、利益重視の世間とは逆の発想をして、それを実行に移しているところが面白い。

夢と金 西野亮廣著

昔、当時は新型のビデオデッキを備えたパナソニックのTVを購入した。
夜、眠ろうとすると、TVからミーンという高音域の音が聞こえて来るので困ったことがあった。
最初は何の音かわからなかったのだけれど、TVをリモコンで消してスタンバイ状態にすると、ミーーンと聞こえるのだ。
コンセントを抜けば、音は消える。
最初は、コンセントを抜いて眠っていたのだけれど、そうすると深夜や早朝の番組などのタイマー録画ができないことになる。
そのために購入したはずなのに、これは不便だ。
ところが、家族の誰に聞いても、そんな音はしないと言うのだ。
仕方なくお隣の人や友人にも試してもらったけれど、聞こえる人はいなかった。
おかしい。
ついでに超音波の聞こえる鳥的な耳を持っているのではないかと、からかわれたりもした。
もしかすると、自分でも耳鳴りかも知れないと疑い始めたけれど、コンセントを抜いて消えるのなら、やはり原因はTVだろう。

でも、電話を掛けるのは、躊躇われた。
こんなことをメーカーに言っても、困らせるだけかもしれないし、自分以外聞こえない音なんて対応してもらえるとも思えなかったでも、しばらく我慢をして、不便さの方が募って来たので、意を決して電話をかけてみた。
そうしたら、すぐにサービスの人が来てくれると言う。
ラッキ~! と思った。
でも、そもそもサービスの人に聞こえなかったら修理できないかもしれない。
そんな不安を抱えていたのだけれど、サービスの人は、ミーンという音に困っているという話を淡々と聞き、
「わかりました」
と答えた後、早速TVの部品を外して、修理を始めてくれた。
(この人にも聞こえるんだ)
そう思うと、不思議な親近感とか同朋意識を感じて、ちょっと嬉しかった。
誰にも聞こえない音が聞こえるなんて、特別というよりは疎外感を感じるような状況だったから。
サービスの人は、出したお茶にも手を付けずに一生懸命に修理をしてくれた。

「すみません」
と呼ばれたので、行ってみると、
「聞いてもらっていいですか?」
と言われた。
「はい」
と私。
すると、サービスの人がTVのスイッチを入れて、消して、もう一度繰り返す。
「どうですか?」
「聞こえません!」
感動の一瞬だ。
やった~! 直ったー!
そう思ったけれど、当時は、そんな風に話せる性格でもなかった。

「あの、すみません。ミーンていう音、聞こえたんですよね?」
「いいえ、聞こえません」
「え~! でも、修理できていますよね?」
「はい。実は、私には聞こえないんですが、たっま~に、そういうお客さんがおいでになるんです。そしてスイッチに入っているこの部品を交換すると、直ったと仰るんです」
「あ~、そうでしたか」
このサービスの人には聞こえないのだというところは少し残念だったけれど、同じことを言う人が世の中にいると分かっただけでも良かったかもしれない。
この時、修理代はいらないと言われた。

その後、震災に遭っていろいろな物が壊れた時。修理のサポートを無料でしてくれた。
欧州にウオシュレットを持って行ったけれど、上手く動作しなかった時も、一時帰国の際、部品と図面を提供してくれた。
とても親切にしてもらったので、今でも、ほとんどの家電製品はパナソニック製品を使っている。

他のメーカーだとなかなかこうは行かない。
そこには、松下幸之助さんの考え方がしっかり詰まっているのだと人から聞いた。
なるほど。
結局、人が必要とするものを良い製品とサービスいう形で提供して対価を頂くという考え方でいれば、日本人の持つお金儲けに対する卑しさを疑う気持ちとか、お金はきれいでないものという感覚を持つことはなくなるのだ。

利益を出す前から、今の三人の仲間の感覚は似ていると思っている。
そもそも営業トークが苦手で、確証のない話を吹聴する人たちの姿を見かけ、そこから離れて来たのが私たち三人だった。
多分、生きるのには不器用なのかもしれないけれど、人を欺いたりしないという安心感は、もしかしたら、今の世の中に一番、求められているのかもしれないと思う。

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